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【H27、回答例】電気化学的補修工法の概要と留意点【技術士・建設部門 コンクリート Ⅱー1-8】


 こんにちは、masaです。技術士二次試験の対策として過去問の回答例を準備するということをしています。回答例集はこちらからどうぞ。

 なお、内容については独断と偏見まみれのため、自己責任により参考にしていただければと思います。

 内容については、もっといい回答が思い浮かんだら変更したりします。

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問題文(全文)

「Ⅱ―1―8 コンクリート構造物の電気化学的補修工法の例を2つ挙げ、その概要を説明せよ。また、それぞれの工法について、劣化したコンクリート構造物に適用する際の設計上又は施工上の留意点を述べよ。」

 

 

原文(案)

 電気化学的補修工法として脱塩工法と電気防食工法について概要と設計・施工上の留意点について述べる。

1.脱塩工法

 電解質溶液(水酸化カルシウム水溶液など)と陽極材とで構成される仮設陽極をコンクリート表面に設置する。陽極材からコンクリート中の鋼材へ1A/m2程度の電流を約8週間通電することで、塩化物イオンが電気泳動することにより、電解質溶液中に排出されることで、コンクリート中の塩化物イオンを除去する工法である。

 留意点としては、給電期間中の陽極材の養生や適切な供給電力量となっているか管理する必要がある。また、塩化物イオンの除去後使用環境により再劣化する可能性があるため表面被覆などの対策工を実施する必要がある。

2.電気防食工法

 コンクリート表面に陽極材を設置し、陽極材からコンクリート中の鋼材へ1A/m2程度の電流を約1~2週間通電する。通電によりコンクリート中の鋼材の腐食反応が停止する効果がある。鉄よりもイオン化傾向の高い亜鉛などを陽極材とする犠牲陽極方式と外部の電源を用いる外部電源方式がある。

 留意点としては、設備の設置などの初期コストに加え、ランニングコストが生じるため概算費用を計算し、費用対効果を検証する必要がある。

(3.再アルカリ化工法)

( 電解質溶液(炭酸ナトリウム水溶液など)と陽極材とで構成される仮設陽極をコンクリート表面に設置する。陽極材からコンクリート中の鋼材へ1A/m2程度の電流を約1~2週間通電することで、コンクリート中にアルカリ性電解質を電気浸透させることで、コンクリート中のアルカリ性を回復させる。

 留意点としては、使用環境によっては再度中性化が進行する可能性があるため表面被覆などの対策工を実施する必要がある。)

 

なぜ、電気化学的補修工法を実施する必要があるのか

 電気化学的補修工法を実施する理由は、最終的には鋼材の錆を止めることにつながり、それを避けるためにそれぞれの目的・手段で補修しています。

 

脱塩工法

 実施する目的はコンクリート中の塩化物イオン濃度を下げるためです。塩化物イオン濃度が高いままだと鋼材の不動態被膜を破壊し、鋼材をさびさせるので、脱塩工法を実施する必要があるという流れです。

 

再アルカリ化法

 実施する目的はコンクリートのアルカリが失われ、中性化してしまっている部分を再度アルカリ化するためです。中性化が鋼材部まで進行すると不動態被膜を破壊し、鋼材をさびさせるので、再アルカリ化法を実施する必要があるという流れです。

 

電気防食工法

 実施する目的は(原因は別として)鋼材の腐食を停止するためです。腐食が進行するほど錆の断面が大きくなり、ひび割れ幅が広がっていくため、それを防ぐために腐食を停止させるために電気防食工法を実施するという流れです。

 

3工法のまとめと違い

 3工法の特徴をまとめると脱塩工法と再アルカリ化工法は鉄筋をさせる原因(脱塩工法であれば塩害、再アルカリ化工法であれば中性化)に対する対処であるのに対し、電気防食工法は鉄筋自体を劣化しないように対する対処である違いがあります。

 3工法とも最終的には鋼材の錆させないことが目的です。

 

そもそも塩害・中性化を発生させないためには

 塩害も中性化も最終的には不動態皮膜が破壊されて鋼材をさびさせるので、以下の対策を実施する。

 

塩害

  • 不動態皮膜を破壊する塩化物イオン濃度の基準値である1.2kg/m3以下であることを保つ。
  • 塩化物イオン濃度は打設時の基準値が0.3kg/m3以下であり、これを守って打設する。

 

中性化

  • 水セメント比を50%以下とし、かぶりを30mm以上とする
  • エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いる

 

関連リンク

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