思考酒後

自分に入ってきた情報を定着、深化するために文章化

MENU

【H27、回答例】社会インフラの維持管理の技術的課題と解決策【技術士・建設部門 コンクリート Ⅲー4】


こんにちは、masaです。技術士二次試験の対策として過去問の回答例を準備するということをしています。回答例集はこちらからどうぞ。

 なお、内容については独断と偏見まみれのため、自己責任により参考にしていただければと思います。

 内容については、もっといい回答が思い浮かんだら変更したりします。

f:id:masa_mn:20190430084243j:plain

 

問題文(全文)

「Ⅲ―4 現在整備されている社会資本の多くは、整備の時期や各々が有する機能、設置環境が異なる他、劣化や損傷の状態もさまざまで時々刻々変化している。こうした既存ストックを今後も有効に活用するためには、劣化や損傷といった変状を早期に発見・診断し、その結果に基づいて的確に対策を行い、これらの履歴等を記録して次の点検・診断に活用するという維持管理の業務サイクルの実施が必要となる。このような状況を考慮し、以下の問いに答えよ。

(1)コンクリート構造物において、維持管理の業務サイクルを実施するために検討すべき項目を、建設分野に携わる技術者として多様な観点から記述せよ。

(2)上述した項目のうち、あなたが重要であると考える技術的課題を1つ挙げ、実現可能な解決策を2つ提示せよ。

(3)あなたが提示した解決策がもたらす効果を具体例を示すとともに、想定されるリスクやデメリットについて記述せよ。」

 

原文(案)

1.はじめに

 我が国の社会資本は1950年代から1970年代の高度経済成長期に多く建設され、今後建設後50年を迎え更新期を迎えるものが多くなる。一方で資金的にも人材的にも対応が難しいといった課題があるため、総合的かつ中長期的な視点をもって今後の社会資本の維持管理の対応をしていく必要がある。

2.維持管理を実施するために検討すべき項目

2-1.メンテナンスサイクルの構築・循環

 集中的に老朽化していく社会資本を確実に管理するためには各インフラにおける点検・診断・修繕・更新・情報の整理・伝達といったメンテナンスサイクルを構築・循環させる取り組みが必要である。そのために効率的に各種データを収集してその時点における現状を把握する必要がある。

2-2.民間事業者の参入

 予算や労働力の確保が厳しいなか、国や地方自治体だけで維持管理を行うことは困難である。民間事業者の主体的な取り組みが重要であり、PPP・PFIを活用したインフラ整備や老朽化対策を進めるほか、民間の投資を一層湯発する仕組みの具体化を進める必要がある。

2-3.人員の確保・教育

 今後10年で現在340万人いるとされている作業者が100万人離職し、さらに賃金の低下や休日が少ないといった理由で新規入職者も低迷している現状がある。維持管理の作業自体の効率化や機械化といった省人化技術開発に注力することも重要であるが、技術を活用する主体であったり、実際の運用を行うべき技術者・作業者が不足するという課題がある。メンテナンスサイクルを運用するために必要な人員を割出し、人員の確保・教育の実施が急務である。

3.技術的課題と実現可能な解決策

 重要であると考える技術的課題を「メンテナンスサイクルの構築・循環」であると考え、解決可能な解決策を以下に述べる。

①新技術の積極的な活用による省力化

 メンテナンスサイクルを回していくためには新技術を積極的に活用することで限られた資金・人材の中で効果・効率を最大化する必要がある。ICT、点検ロボットの導入、赤外線カメラの活用などを積極的に取り入れることで実用性の向上を図れると考える。急斜面や狭隘地の点検は人の手によって行うと通行規制や仮設足場の設置が必要となるため費用・安全面からそういった場所での導入を優先的に進める必要がある。

②システム整備と標準化教育

 今後、中長期的にメンテナンスサイクルを回していく上でデータの受け皿となるシステムの構築が必要となる。分かりやすい入力フォームの設置や誤入力防止機能などを盛り込み長期間活用できるデータベースを多様な観点から検討して作り込む必要がある。

 データベースの入力、意図などについて作業者間による差異をなくすために標準化教育を行う必要がある。点検を行う目的や予防保全による効果を含め、メンテナンスサイクルの意味を共有し、全員が同じ方向性となるように管理する。

4.解決策の効果とリスク・デメリット

①新技術の積極的な活用による省力化

 新技術の積極的な活用によって効率化が図られ、同一費用・同一人工における効果を最大化の期待ができる。

 新技術の活用により、作業が一部機械に代替されることでその作業の意図・目的の理解が損なわれる恐れがある。これについてはシステム整備時の標準化教育の中に盛り込み定期的に意図・目的を共有する機会を設ける。

②システム整備と標準化教育

 システム整備と標準化教育により、中長期的な運用においても同一データの取得ができ、そのデータにより統計的な分析が可能になることで点検頻度など構造物の運用の最適化が可能になると考える。

 構造物の状態や要求性能は時代とともに変化しうるため測定・管理するデータを定期的に見直すように運用する。データ測定・分析に頼り切らずに、定期的に標準化教育する機会を設け個々の意見を交えて今後の運用について協議する。