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【H28、回答例】コンクリート構造物の品質確保のために検討すべき事項と解決策【技術士・建設部門 コンクリート Ⅲー3】


 こんにちは、masaです。技術士二次試験の対策として過去問の回答例を準備するということをしています。回答例集はこちらからどうぞ。

 なお、内容については独断と偏見まみれのため、自己責任により参考にしていただければと思います。

 内容については、もっといい回答が思い浮かんだら変更したりします。

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問題文(全文)

「Ⅲ―3 限られた税源の中、建設投資額における社会ストックに対する維持管理費の比率が益々増加する傾向にある。その一方で、建設段階の初期欠陥による供用開始後の早期劣化や計画供用期間中の劣化現象が発生している。したがって、今後建設される社会資本は所定の品質が確保され、長期間供用できるものでなくてはならない。

(1)今後建設されるコンクリート構造物の品質を確保するために、検討すべき項目を多様な観点から記述せよ。

(2)上述した項目のうち、あなたが重要であると考える技術的課題を1つ挙げ、実現可能な解決策を2つ提示せよ。

(3)あなたが提示した解決策がもたらす効果を具体的に示すとともに、想定されるリスクやデメリットについて記述せよ。」

 

原文(案)

1.はじめに

 我が国の建設業界は維持管理費が益々増加傾向にある。一方で、初期欠陥により計画供用期間を満足できていない構造物が発生していることで財政的に健全な維持管理が困難な状況となっている。このことを踏まえ、所定の品質を確保するための課題と解決策について、以下に述べる。

2.品質を確保するために検討すべき項目

①人材育成・技術力の確保

 現在、約340万人いるとされている建設技術者は今後10年で約100万人離職するとされている。一方、若手入職者は賃金・休日が少ないという理由で減少傾向にあり、所定の技術力を有した作業者が不足するという問題があり、短期的にも中長期的にも検討・解決すべき最重要課題である。

②現場作業の効率化・省人化

 建設投資額はピークに比べると大幅に低下しており財政的にかなり厳しい状況にある。一方、維持管理すべき構造物は年々増加傾向にあり、今後も増加することが予想されている。両者の問題を同時に解決すべく現場作業の効率化・省人化を図る必要がある。新技術・新工法を積極的に採用することにより品質を保持しながらコストや手間を削減し、同じ予算でできるだけ多くの社会資本の品質を確保できるように検討を行う。

③定期的な点検の実施

 半永久に使用できると考えられていたコンクリート構造物であるが、経年により建て替え・補修の必要があることが明らかになった。劣化は時間の進行とともに急速に進行するため、定期的に点検し、構造物の状態を把握・管理し、急速な劣化・多大な労力を要する前に補修し、ライフサイクルコストを最大化できるような体制を整える必要がある。

3.重要な技術的課題と解決策

 上述した項目のうち、重要であると考える技術的課題は「人材育成・技術力の確保」である。

3-1)OJT 、OFF-JTによる教育の実施

 OJT(実務を通した学習)によって実際の仕事の流れを体験することで定着しやすくなる。OFF-JT(机上の学習)によって仕事の基礎や目的を体系的に学習することができる。両者を取り入れることで熟練技術者の持つ技術力を効率的に習得できると考える。

3-2)ナレッジマネジメントの実施

 熟練技術者が個人で保有する暗黙知を極力文章化して形式知としてOFF-JTの一部に取り入れ、知識を伝承していく仕組み(=ナレッジマネジメント)を整備する必要がある。ナレッジマネジメントを実施することでOJT環境による差(現場環境や指導員)を最小化できたり、個人が自分のタイミングで見返すことができたり、組織として体系的な知識を保持することで熟練技術者の育成の再現性を高めることができる。

4.解決策がもたらす効果と想定されるリスク

4-1)OJT 、OFF-JTによる教育の実施

 効果は相互補間的な関係であるため理論・実践的な理解が促進されることである。また、実現場に出る前に基礎知識があるとスムーズに教育を進めることができる。

 リスクはOFF-JTを行う教育システムや人材を持っている企業が少ない点である。地域という単位で担い手を確保する育成コンソーシアム等を設立して、地域のネットワークを確立・強化して人材育成を支えるシステムを構築する。

4-2)ナレッジマネジメントの実施

 効果は組織として形式知を保持しているため熟練技術者育成の再現性が高まる点である。

 リスクはナレッジマネジメントの実施が技術的に難しい点がある。暗黙知を形式知化し、それらをまとめる作業、まとめた形式知を使って指導する人材の不足などがあり、知識を伝承する土壌を整備することが難しい。

 これについては定期的に熟練作業員、指導員となる人間、教育を受ける人間でミーティングを実施し、意見を吸い上げ、ナレッジマネジメントを段階的に整備・実施していく必要がある。