こんにちは、masaです。技術士二次試験の対策として過去問の回答例を準備するということをしています。回答例集はこちらからどうぞ。
なお、内容については独断と偏見まみれのため、自己責任により参考にしていただければと思います。
内容については、もっといい回答が思い浮かんだら変更したりします。
問題文(全文)
「Ⅱ―2―4 経年劣化によるかぶりコンクリートの剥離・剥落で鉄筋が露出したコンクリート構造物において、補修対策を行うものとして、以下の問いに答えよ。
(1)剥離・剥落の原因として考えられるものを2つ挙げ、それぞれについて原因の特定と補修対策を行うために調査すべき内容を記述せよ。
(2)調査から対策実施までの業務手順とその内容を記述せよ。
(3)業務を進める際に留意すべき事項を記述せよ。」
原文(案)
(1)剥離・剥落の原因および原因の特定と補修対策を行うために調査すべき内容
剥離・剥落の原因としては塩害と中性化による鋼材腐食が考えられる。
塩害の原因の特定のためには鉄筋位置における塩化物イオン濃度を確認する必要がある。塩化物イオン濃度が1.2kg/m3以上であるかどうかが塩害の影響の判定基準となる。
中性化の原因の特定のためには中性化深さを確認する必要がある。フェノールフタレイン溶液を噴霧し、赤紫色を呈色する箇所はアルカリ性であるため未中性化部、無色の箇所は中性化部であり、残存かぶりが10mm以下であるかどうかが中性化の影響の判定基準となる。
いずれの劣化についても剥離・剥落箇所近傍における鉄筋の腐食範囲を確認し、補修範囲を明確にする必要がある。
(2)調査から対策実施までの業務手順とその内容
①書類による調査
現地調査を行う前に、適用した示方書、設計基準、設計図書、施工記録、過去の診断記録、補修・補強履歴等の記録を調べ、構造物の概要に関する情報を入手する。
②目視およびたたきによる点検
コンクリート表面に顕在化している変状を目視により表面状況の観察を行う。またハンマ等によってたたきによる方法を併用し内部の空隙等の存在を把握する。
③非破壊試験の実施
鋼材の腐食範囲を確認するために、自然電位法や分極抵抗法等の電気化学的方法を実施する。
④コンクリート試験
コンクリートコアを採取し、塩化物イオン濃度の測定や中性化の進行について確認を行う。
⑤損傷図の作成および損傷程度、健全度の評価
各部材について損傷図を作成し、損傷程度を評価する。また健全度評価を行い補修すべき箇所を抽出する。
⑥補修対策の検討
補修が必要と判断された部材について、最も効率的かつ効果的な補修対策を立案する。その際LCCを考慮し補修箇所の優先順位を決定することが重要である。
⑦補修対策の実施
補修工事を実施する場合には、地域住民の影響や河川に対する環境を考慮した施工計画を検討する。
(3)業務を進める際に留意すべき事項
・塩害が原因の場合、劣化部のみ補修を実施すると未補修部との電位差によりマクロセル腐食が発生するため、犠牲陽極材を埋設する。
・単独劣化の劣化予測はある程度確立されているが、複合劣化については劣化予測が確立されていないため、複合劣化が考えられる場合は単独劣化よりも点検の頻度を多くして経過観察に留意する必要がある。
・LCCを考慮し、残存供用年数に応じて今後の維持管理計画を立案する。
ポイント
- かぶりコンクリートの剥落=中性化or塩害 というストーリー
- 塩害=塩化物イオン濃度が1.2kg/m3以上、中性化であればフェノールフタレイン溶液によって無色となる範囲が鉄筋から10mm以下 が判定基準
- 「(2)調査から対策実施までの業務手順とその内容」は補修系の問題で頻出なので丸暗記してもいいくらい重要です。
- 塩害の場合、マクロセル腐食が発生することは留意点として書きやすいので暗記する必要有りです。
マクロセル腐食とは
劣化部をはつりだし、フレッシュモルタルによって断面修復する場合に発生する。原理としては既存断面と新設断面において塩化物イオン量が異なることから既存断面から新設断面へ向かって塩化物イオンが移動することで電位差が生じ、電位差によって腐食電流が発生することで境界面に位置する鋼材の腐食反応が促進されるというものである。
マクロセル腐食の対策としては、①亜鉛からなる犠牲陽極材を鋼材に設置し、腐食電流を犠牲陽極材へと流すことで、鋼材自体の腐食を防止する方法、②断面修復する範囲を鋼材よりもより内側とすることで鋼材位置が境界面にあることを避けることでマクロセル腐食の影響を受けにくくする方法がある。
▽マクロセル腐食を招くはつり
▽マクロセル腐食を受けにくくするはつり