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【H31、回答例】鉄筋コンクリート構造物の錆汁を伴うひび割れに対する補修計画の策定【技術士・建設部門 コンクリート Ⅱー2ー3】


 こんにちは、masaです。技術士二次試験の対策として過去問の回答例を準備するということをしています。回答例集はこちらからどうぞ。

 なお、内容については独断と偏見まみれのため、自己責任により参考にしていただければと思います。

 内容については、もっといい回答が思い浮かんだら変更したりします。

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問題文(全文)

「Ⅱ―2-3 温暖な海岸地域にある鉄筋コンクリート構造物に錆汁を伴うひび割れが見つかった。耐久性を回復させるために補修計画の策定を行うこととなった。あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。」

 

原文(案)

(1)調査、検討すべき事項とその内容

 構造物から錆汁を伴うひび割れが見つかったことから、中性化、塩害、アルカリシリカ反応およびそれらの複合による劣化であることを想定して調査、検討を行う。

1)書類調査

 構造物の設計年および竣工年、適用設計基準、使用材料、設計荷重、配筋条件、海岸までの距離といった設計条件の確認を行う。

2)現地調査

 現地調査項目と確認すべきことの対応を以下に示す。

①ひび割れの目視確認

 対策範囲の確認と劣化要因の絞込み

②コンクリートのコア採取

 塩化物イオン濃度の測定による塩害の判定(判定の基準値は1.2kg/m3)

 骨材のアルカリ反応性の確認によるASRの判定

 圧縮強度の測定による力学的性能の変状の確認

③はつり調査

 フェノールフタレイン溶液噴霧による中性化の判定(無色であれば中性化)

 かぶり深さ、発錆状況の確認。

(2)業務を進める手順

 書類調査・現地調査の結果から劣化要因および劣化の進行度合い(潜伏期、進展期、加速期、劣化期)を判定する。

 その結果を元に劣化因子の遮断(表面被覆等)か、除去(断面修復等)か鉄筋腐食の抑制(電気防食等)を構造物の重要度、残りの供用年数、費用といった要素を総合的に考慮し、目標とする性能およびそれを実現するための施工方法を決定する。

 業務を進める上での留意すべき点を以下に述べる。

・交差条件(建築限界や河川阻害等)を考慮し、適用可否を明確にして検討を行う。

・鉄筋の断面欠損が著しく耐荷力不足であると判断される場合は使用制限を行った上で施工を行う。

・複合劣化については対策手法が確立されていないため別途検討が必要であり、施工後の経過観察が必要となる。

・劣化要因が塩害で対策工法を断面修復工法とした場合、未対策部との境界においてマクロセル腐食による再劣化の恐れがあるため、施工範囲にゆとりを持たせる必要がある。

(3)関係者との調整方策

・供用中の構造物の施工においては、施設管理者等との協議を密に行い、第三者に対する安全性や利便性に配慮した施工を計画する。

・周辺住民に対して住民説明会を実施し、工事の必要性や工事内容について専門用語などを用いずにわかりやすい説明を行うことで工事への合意形成を図る。

 

マクロセル腐食とは

 劣化部をはつりだし、フレッシュモルタルによって断面修復する場合に発生する。原理としては既存断面と新設断面において塩化物イオン量が異なることから既存断面から新設断面へ向かって塩化物イオンが移動することで電位差が生じ、電位差によって腐食電流が発生することで境界面に位置する鋼材の腐食反応が促進されるというものである。

 マクロセル腐食の対策としては、①亜鉛からなる犠牲陽極材を鋼材に設置し、腐食電流を犠牲陽極材へと流すことで、鋼材自体の腐食を防止する方法、②断面修復する範囲を鋼材よりもより内側とすることで鋼材位置が境界面にあることを避けることでマクロセル腐食の影響を受けにくくする方法がある。

 

 

▽マクロセル腐食を招くはつり

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▽マクロセル腐食を受けにくくするはつり

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