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コンクリート工の生産性向上に向けた取り組み【技術士・建設部門 コンクリート】


 プレキャストコンクリート製品について(メリット、現状と普及に向けての課題)

高流動コンクリートについて(定義、ニーズ、問題点、現状と今後の開発)と同じようにコンクリート工学Vol.55No.9の特集:生産性向上に係るコンクリート技術の現状からコンクリート工の生産性向上に向けた取り組みについて自分のためにまとめ、国土交通省としてどんなことを推進しようとしているのか、これを読めば全容を把握できるようなメモを残しておきます

 

 

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3大施策

 3大施策は、『規格の標準化』『全体最適』『工程改善』となっている。

 

『規格の標準化』を実現するために実施していること

スランプ規定の見直し

スランプ規定を見直すこととなった背景 

 耐震設計基準の見直しに伴い鉄筋量が増加し、コンクリートの締固めが困難となった。コンクリートの打設が生産上のネックになることや充填不足による品質低下が懸念されるようになった。

 現場での流動性を高めたコンクリートの活用を図るために「流動性を高めた場所打ちコンクリートの活用に関するガイドライン」を策定した。ガイドラインの構成は①コンクリートの流動性の選定、②施工時における品質確認上の留意点、③高流動コンクリートの選定と留意点となっている。

 

①コンクリートの流動性の選定

 構造物の種類から配筋条件を適切に考慮し、必要な施工性能を確保できることが期待できるスランプ12cm(従来は8cm)としてよいこととしている。

 

②施工時における品質確認上の留意点
  • スランプ12cmの場合:単位水量、単位セメント量、水セメント比を配合計画書で確認
  • スランプ12cmを超える場合:上記に加えて、材料分離抵抗性を確認。試し練りを行い、スランプ試験後の試料の外観やブリーディング量から材料分離抵抗性を確認。

 

③高流動コンクリートの選定と留意点

 配筋量などの施工条件が厳しく特別な流動性能が必要と判断された場合、あるいは使用により生産性が著しく向上すると判断された場合は高流動コンクリートを選定してよいこととしている。

 

部材の仕様標準化

部分最適のデメリット

 現場毎に最適化を図る、部分最適に基づく設計が基本となっているが、このような対応とすることで再設計が必要となることや、同種のものを使用することで得られるスケールメリット(量産効果)が働きにくくなる。形式がそれぞれ異なる(標準化されていない)と維持管理・点検でも個別対応が必要となり非効率で割高になる。

 

部材の仕様標準化の推進によって得られるメリット

 標準化により、上記のデメリットを解消し、プレキャスト製品ユニット鉄筋(プレファブ鉄筋)などの工場製作化を進め資機材の転用等によるコスト削減、生産性向上を目指す

 H29にはプレキャスト製品の標準寸法等を定めた「土木工事に関するプレキャストコンクリート製品の設計条件明示要領(案)」を積極的に活用し、設計の効率化を図ることとしている。 

 

『全体最適』を実現するために実施していること

全体最適が進まない要因

 その工程を実施するためだけの費用という部分のみを取り出した場合、従来工法よりも割高になり全体最適の普及が進まなくなってしまっている。

 

阻害要因を取り除くには…

 施行、メンテナンス、更新の効率性や安全性を設計段階から追求できるように下流プロセスを踏まえた設計施工や維持管理に知見を有するものが設計の段階から関わる仕組みなどフロントローディング工程の初期で負荷をかけて、後工程で生じそうな仕様変更や工程の遅延リスクを除去し、コストを削減し、品質向上や工程を短縮することを狙った考え方のこと。)を導入する必要がある。

 

全体最適を実現するために総合的に実施していることとは…
  1. 上流段階(概略設計)での配慮事項の明確化:設計時点でフロントローディングを過不足なく導入するためにどんなことに配慮すべきかを明確にする。
  2. 設計者から施行者への引継ぎ事項の明確化:設計時の設計意図を施行者へ引継ぎを行う。またその際の伝達事項の抜け漏れがないように明確にしておく。
  3. 比較検討手法の確立:直接的な工事費の他に考慮すべき事項を考慮し比較検討できるような手法を確立する。

 

『工程改善』を実現するために実施していること

 サプライチェーンマネジメントの導入

 サプライチェーンマネジメントとは、生産にまつわる全工程を企業という枠組みを共有(電子化)することにより適切な工程管理書類の簡素化や材料確認、検査の合理化が期待できる仕組みのこと。

 国土交通省としては、H29から生コン工場からの製品情報の電子化に向けた検討を進めることとした。一番の目的は、現状、現場での試験結果や運搬状況がリアルタイムでやりとりできないため、打設の出戻りが生じており、それを解消するために検討を進めている。加えて、データの入力省略といったメリットがある。

 

まとめ

 国土交通省の取り組みを簡単にまとめると以下のようになる。

  • 規格の標準化:過密配筋に対し、スランプ規定を見直し、生産性向上にむけてガイドラインを策定した。プレキャスト部材の利用促進のために標準寸法を定める等ガイドラインを策定した。
  • 全体最適:フロントローディング、設計者と施行者の引継ぎ、全体として適正評価できるような比較検討手法の確立を推進した。
  • 工程改善:サプライチェーンマネジメントを生コン工場で推進することにより、打設の出戻りやデータの入力省略といったメリットが期待される。

 

 

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