電気防食工法についてまとめられた書籍を読んで、一式の知識を蓄えたつもりなのでまとめてみます。本を読んだ直後のせいかもしれませんが、すごく有用な工法のように感じています。
電気防食工法とは
かなりざっくり言うと、鋼材に電気を流すことで以下の効果が得られます。
- 鉄筋の腐食停止(鋼材の膨張抑制に有効)
- コンクリートの再アルカリ化(中性化対策に有効)
- コンクリートの塩化物イオンの除去(塩害対策に有効)
腐食部分を除去する対症療法ではなく、腐食自体を止めるという根本を断つ工法です。
え、すげーいいじゃん。(僕の率直な感想。)
でもお高いんでしょう?
計算過程は省略しますが、500円/月程度で、設備自体も40年ほどの耐久性があるとのことです。
ただし、システムを常に稼働しなければいけないという面はあります。
どうやって腐食を停止するのか?
腐食現象は電位差によって電流が発生するものであり、電位差を解消するために鋼材を介して電気を流します。ちなみに電気防食工法では、健全側(カソード)の高い電位を腐食側(アノード)の低い電位に合わせる方法を取っている。
具体的には、コンリート構造物の表面に陽極を設置し、鉄筋などを陰極にして直流の電気(防食電流)を流すことで健全部の電位を低下させている。
そもそも腐食するのはなぜか?
一定の塩化物イオン濃度となると鋼材表面に被覆されている不動態被膜(厚さ数nmの酸化被膜)が破壊されるため。
そのため塩化物イオン濃度が高くなった場合、電気防食して塩化物イオン濃度を下げたり、はつりとることで塩化物イオン濃度の高い部分を除去したりしている。
電気防食工法のメリット
- 多量の塩分を含有した場合でも防食可能、かつ電気防食により脱塩する。
- 塩分を含有するコンクリートの除去が不要。(電気により脱塩するため)
- 脱塩とは、 コンクリート中の塩化物イオンが鉄筋などの鋼材からコンクリート表面の陽極方向に移動(電気泳動)するもの
- コンクリートが再アルカリ化するために中性化に有効。
- 再アルカリ化とは、電気化学的反応により、鋼材表面付近(陰極)で水酸イオンが生成され、鋼材付近のアルカリ性が回復すること
- 鉄筋の防錆処理が不要。
- 防食効果の確認が容易。
- 劣化の進行度によらず有効な対策となる。
施工時の留意点
- エポキシ樹脂などで被覆されている場合、電気的絶縁層となるので除去する
- コンクリートを介して防食電流が供給されるため、断面欠損箇所はモルタルまたはコンクリートで修復する必要がある。
▼電気化学的補修工法の回答例を書いています。