技術士の過去問を見ると、「耐震設計(耐震補強)のためにどのような調査が必要なのか」、「どのような方法で耐震設計(耐震補強)するか」といった設問がそれなりの頻度で出題されています。
一方で、ぼんやりと耐震設計(耐震補強)の方法は知っているものの業務で扱うことはほぼない初心者で、回答をどうやって作るかという部分で途方に暮れていたときにすごく分かりやすいものを発見したのでそれに基づいて耐震設計についてまとめたいと思います。
参考文献:耐震設計とは~耐震設計の基礎知識
耐震設計とは
耐震設計とは文字通り、地震に対して耐えられるような設計を示していて、具体的には地震動による水平方向力を対象に設計を行うことを指す。
水平方向力の耐久性に影響する要素(耐震設計のために調査すべき項目)
①強度:耐震壁など耐力となる部材が多く・強い場合に地震に強い構造となる。
②靱性:一気に壊れず、粘り強い壊れ方をする性質を靱性(じんせい)という。具体的にはせん断破壊せず、曲げ破壊すること。
③形状のよさ:建物全体の強度のバランスのこと。ピロティ(1階部分が駐車場など壁の量が他の階に比べて極めて少ない構造)など明確な弱点部があるとその部分が先行して破壊し、建物全体としての評価は倒壊と判定される。
(④劣化の度合):これは耐震診断の時に検討すべき項目で、鉄筋のさび、コンクリートの各種劣化(中性化、アルカリ骨材反応等)の進行により、建物の水平方向への耐力が異なる。
耐震設計実施のための調査方法
RC造の指針(既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準:日本建築防災協会)では1次、2次、3次と精度の異なる診断方法がある。
1次診断
壁・柱の断面積の多少を調べる。(コンクリートの強度と断面積で略算)
→本格的に耐震診断する前に簡略的に耐震性を把握するために使う
2次診断
はりなどの水平構造部材が破壊しないという前提で、柱・壁などの階を支えるそれぞれの鉛直部材について、壊れ方(曲げ破壊型あるいはせん断破壊型)を分類する。
分類したグル―プごとの強度と靱性を評価することにより建物全体の耐震性能を判定する。
3次診断
鉛直部材が崩壊するより先に、梁が崩壊したり、壁が回転することで建物の耐震性能が決まるような場合がある。
具体的な耐震補強工法
壁の補強
耐震壁増設
壁のない空間に新たに耐震壁を設置するもの。既存の柱・梁面にあと施工アンカーを打ち、補強壁と一体的な構造となるようにする。
壁増打ち
耐震壁の耐力(剛性)を上げるため、壁の厚み方向に鉄筋コンクリートを増し打ちする。
耐震ブレース
壁の代わりに鉄骨の斜材(ブレース)を設置するもので、外からの採光を確保したいときや、出入り口をとりたいとき、基礎が弱く建物を現状より重くでいない場合などの壁補強の工法としてよく用いられる。
開口閉塞
窓が入っていたり、そで壁等の部分的な壁のみで、フレーム内全体が壁でない場合、既存の壁を耐震壁として評価できないことがある。このため、開口部に壁を継ぎ足し、耐震壁となるようにするもの。
荷重軽減工事
建物重量を軽減することも、有効な耐震改修工事。重い屋根や外壁を軽いものにとりかえたり、場合によっては3階建てを2階建てにするような最上階除去工事も有効
免震工法
免震工法は既存の建築物の基礎や中間階にダンパー(減衰材)や積層ゴムなどを用いて免震層を設けて、構造物への地震の揺れを低減させる工法。
ただし、免震装置そのものは地震のエネルギーを一手に引き受けることになり、大きな変形を伴うため維持管理方法など運用について留意する必要がある。
制振工法
制振工法は、建築物の土台と梁の間などにダンパー(減衰材)などの振動吸収装置を設けることで、地震による構造物への揺れを減らす工法である。免震工法よりも揺れは軽減できないが、コストは安い。
コンクリートブロック塀の耐震対策
先日発生した大阪地震によるブロック塀の倒壊による死亡事故がありましたね…。控え壁を設けていないのが倒壊の原因と思われます…。
ブロック塀の倒れ防止対策
- 基礎部の根入れ深さを十分に取る
- ブロックの高さが地面から2.2m超の場合、ブロックの厚さを15cm以上とする。
- ブロック塀が長く連続する場合、3.4mピッチで控え壁を設置する。
▽控え壁
感想
保有水平耐力とか、耐震指標とか聞いただけで拒否反応の出そうな単語ではなく、すごく噛み砕いてあり、わかりやすくいい資料でした。
まだまだ課題はありますが、次は損傷状況の把握・評価について勉強していきます。
参考文献:耐震設計とは~耐震設計の基礎知識