記述式の問題で、それなりの頻度で「補修」「耐震」というキーワードが出てくるので、コンクリート診断士のテキストを参考に補修・補強(耐震)工法について概要をまとめておきます。
補修・補強の定義(コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針(2003年版))
補修
ひび割れの発生によって損なわれたコンクリート構造物の耐久性、防水性など、耐力以外の性能を回復させることを目的とする行為
補強
ひび割れの発生によって損なわれたコンクリート構造物の耐力低下を回復させることを目的とする行為
補修工法
ひび割れ補修工法
ひび割れ補修工法は、主にひび割れ箇所からの劣化因子の浸入防止、防水性や耐久性の向上を目的に実施される。
→コンクリートの内部に劣化因子がなく、ひび割れ自体を補修するための工法である。
①ひび割れ被覆工法
ひび割れ幅0.2mm以下に適用。表面に被覆材を塗布して補修する工法
②注入工法
ひび割れ幅0.2mm〜1.0mmに適用。注入用パイプなどを用いてひび割れ箇所に注入材を充填して、ひび割れ内部を閉塞する工法。防水性、耐久性、躯体の一体性を向上できる。
メリット
- 注入材の量を管理しやすい。
- 注入精度が安定していて、作業員の技量に左右されない。
- ひび割れ深部のひび割れ幅が狭い場合でも確実に注入できる。
③充填工法
ひび割れ幅0.5mm以上に適用。ひび割れ部に沿ってコンクリートをV字やU字に切削し、そこに補修材を充填する。鉄筋腐食してない場合に適用。
補修材はひび割れに動きがあるときは、変形追従性の大きいウレタン樹脂やシリコン樹脂を用いる。ひび割れに動きがないときはポリマーセメントモルタルを用いる。
断面修復工法
劣化により欠損あるいは許容限度以上の劣化因子を含むかぶり部を撤去した後の断面に対し、当初の断面寸法へ修復することを目的とした工法。
プライマーや防錆剤塗布などの下塗りの後、欠損部の充填という工程で進められる。
断面修復材に求められる性能
- 圧縮強度などが既設コンクリートと同等以上
- 熱膨張率、弾性係数、ポアソン比が既設コンクリートと同等
- 収縮が小さく、既設コンクリートとの付着が良い
- 作業性が良好
表面被覆工法
樹脂やポリマーで表面を被覆することで、劣化因子の侵入や劣化の進行を抑制し、耐久性の向上や美観の回復を図る工法。構造物の劣化機構ごとに被覆材を使い分ける必要がある。
含浸塗布工法
コンクリート表面に含浸することで、劣化因子の侵入を抑制する工法。下地処理したコンクリート表面を十分に乾燥させた後に含浸材を塗布するのがポイント。
剥落防止工法
繊維シートなどによりコンクリート片などが剥落するのを防ぐ工法。
電気化学的補修工法
①電気防食工法
防食回路を構築してコンクリートを介して鉄筋に防食電流を供給することで、鉄筋表面の腐食反応(アノード)を抑制する。
塩害による劣化が対象で、鉄筋の腐食反応を停止させる工法。基本的に劣化段階を問わずに適用できる。
②脱塩工法
仮設した外部電極とコンクリート中の鉄筋との間に直接電流を流すことでコンクリート中の塩化物イオンの除去および鉄筋の不動態化を行う工法。
コンクリート表面に電解質溶液(水酸化カルシウムやホウ酸リチウムなど)を含んだ仮設陽極材を8週間設置し、直流電流を流しコンクリート中の塩化物イオンを電気泳動することにより脱塩する。
③再アルカリ化工法
電気浸透によってコンクリート中のアルカリを回復させる。電解液として炭酸ナトリウムを使用。
コンクリート表面にアルカリ性溶液(炭酸カリウムなど)を含んだ仮設陽極材を1〜2週間設置して、直流電流を流し、電気浸透させることで再アルカリ化する。
補強工法(土木)
鋼板接着工法
鋼板接着工法はコンクリート部材と鋼板を注入用接着剤で接着・一体化させる工法である。コンクリート部材の引張応力面に鋼板を接着させることで、鋼板が引張材としての役割を果たし、曲げ耐力およびせん断力の向上が期待できる。
巻立て工法
巻立て工法は、既設コンクリート部材の周囲に補強材を配置して、既設部材と一体化させる工法であり、耐震補強に効果がある。補強材の種類により、鋼板巻立て工法や連続繊維シート巻立て工法、RC巻立て工法、モルタル吹付け工法、プレキャストパネル巻立て工法に分類される
外ケーブル工法
外ケーブル工法は緊張材をコンクリート部材の外部に配置して、定着部や偏向部を介して部材に緊張力を与える工法である。プレストレスを導入することにより、コンクリート橋などの曲げ耐力やせん断耐力を向上させることができる。
補強工法(建築)
免震工法
免震工法は既存の建築物の基礎や中間階にダンパー(減衰材)や積層ゴムなどを用いて免震層を設けて、構造物への地震の揺れを低減させる工法。
制振工法
制振工法は、建築物の土台と梁の間などにダンパー(減衰材)などの振動吸収装置を設けることで、地震による構造物への揺れを減らす工法である。免震工法よりも揺れは軽減できないが、コストは安い。
まとめ(感想)
- 補修:ひび割れ補修工法はひび割れが入り、かつ内部の劣化因子のないときに適用されるという適用条件が明確になって良かった。
- 耐震:巻立て工法、免振工法、制振工法が耐震補強として有効なのが分かって良かった。過去問では設計上・施工上留意すべき点が求められているので回答できるように続けて調べたい。