維持管理の必要性について
日本のインフラは高度経済成長期(1950年代後半~1970年代前半)に集中的に整備され、これらのストックは建設後30年~50年が経過していることから、今後急速に老朽化が進行することが想定される。そのため維持管理が必要になってくる。
具体的には道路橋、排水機場・水門、港湾岸壁などは20年後(2040年)には半数以上が建設後50年を迎えることとなっている。
維持管理に要する費用について
維持管理に要する費用については国土交通省の調査(現状の技術で実施するという条件で算定)で2013年に3.6兆円、2023年に4.3兆円~5.1兆円、2033年に4.6兆円~5.5兆円と推計されている。
段階的に維持管理費が増加していく一方で建設投資額は近年伸びておらず、それが継続すると仮定した場合、
- 2037年には維持管理・更新費が投資総額を上回る。
- 2011年度から2060年度までの50年間で全体の約16%が更新できない。
と試算されている。
今後の維持管理の課題と方針について
上記に挙げた費用も問題の一つであるが、少子高齢化・人口減少、環境問題・エネルギー制約などのあらゆる社会的問題にも向き合いながらインフラを更新することが維持管理の課題となっている。
そのためには総合的かつ戦略的なマネジメントにより、計画に基づいた効果的・効率的な維持管理を行う必要がある。具体的には保有する社会資本について、その量、老朽化の程度や更新のコストを把握し、同時に、人口減少・高齢社会における今後の需要を把握し、更新なのか、処分なのか、再利用するか検討し、ストックの利用最大化を図る必要がある。
中長期的なアセットマネジメントの実施について
社会資本の大部分は地方公共団体が管理する施設であり、広域に分布している。社会資本のデータベースを整備し、それを活用して一定のサービスを保ちながらアセットマネジメント(=資産管理)を実施する。
アセットマネジメントの3つのレベル
①日常的マネジメント:日々の清掃・保全・修繕等の効率化
構造物は日々、疲労・劣化していくものであり、安全の確保のためには監視や維持管理が欠かせない。一方で、財政難のため、コスト削減を図りながら、効率的・経済的に運用していく必要がある。
効率的・経済的に運用するために地域からの意見やデータベースに基づいて的確な維持管理水準について検討を進め、かつ、地域住民がボランティアとなり、清掃・除草などの日常管理業務を行っている。
②管理的マネジメント:長期的視点からの予防保全(長寿命化)によるトータルコストの縮減
既存インフラを効率的かつ適切に維持・更新していくためには、早期発見・補修により、施設全体の長寿命化を図る「予防保全的管理」が重要であり、高い耐久性が期待できる素材・構造の活用を図り、長寿命化計画の策定・実施、重量制限違反車両に対する指導や処分の厳格な実施等の社会資本の適正な利用による長寿命化対策等を推進し、トータルコストの縮減を実現する必要がある。
③経営的マネジメント:社会資本の「選択と集中」、複合化、処分・利活用、民営化
人口減少等による財政難の中でストックを運用するためには「選択と集中」が必要となる。 選択と集中については次のような基準がある。
- 今整備をしないと、大規模又は広域的な災害リスクを低減できないおそれのあるもの
- 今整備をしないと、我が国産業・経済の基盤や国際競争力の強化が著しく困難になるおそれのあるもの
- 今整備をしないと、「持続可能で活力ある国土・地域づくり」の実現に大きな支障をもたらすおそれのあるもの 今適確な維持管理・更新を行わないと、将来極めて危険となるおそれのあるもの
このような基準を基に選択と集中を行い、効率的な社会資本の運用を行っている。
具体的な運用手法としては民間による社会資本の利活用、PFIの推進、社会資本の複合化、民営化などがある。
参考文献
6 社会資本の適確な維持管理・更新【国土交通省HP】
3 社会インフラの維持管理の動向【国土交通省HP】
維持管理計画の策定手順(回答例)
①点検・診断の実施
点検について必要な体制を整備し、点検することで劣化・損傷の程度を把握するとともに、進行する可能性・速度や影響について評価・診断を実施する。
②維持管理計画の策定
点検に基づき施設の健全度を把握した上で、対策の内容や時期を維持管理計画としてまとめる。その際、部材ごとの劣化予測、予防保全型および事後保全型等の維持管理手法の選定、計画期間内に要する費用の概算を整理する。